前立腺肥大化による排尿障害

前立腺は男性特有のクルミ大ほどの大きさの臓器で、精液の一部とされる前立腺液を分泌する働きをします。膀胱の直下にあり、尿道を取り囲むように位置しています。
この前立腺が、加齢やホルモンの影響、あるいは遺伝的影響などの原因によって肥大化し、様々な排尿障害がみられていると前立腺肥大症と診断されます。
同疾患は、高齢になればなるほど患者数が増えていきます。
ある統計によれば、55歳以上の男性の2割、80代になれば8割程度の方に発症がみられるとされていますが、症状の現れ方というのは、人によって異なります。
前立腺は肥大化すると尿道を圧迫するようになります。
それによって排尿機能障害による様々な症状が起きるようになります。
主な症状ですが、同疾患は進行の程度によって、第1期~第3期に分けられます。
第1期は初期にあたり、膀胱刺激期ともいわれます。
同時期は、頻尿や尿意切迫感、下腹部の不快感などがみられるようになります。
さらに症状が進行した状態が第2期で、残尿発生期とも呼ばれます。
この時期になると、尿を出し切るのが難しくなり、残尿が発生するようになります。これが引き金となって膀胱炎や尿路感染症の発症リスクも高まります。
最も病状が進行しているのが第3期(慢性尿閉期)です。
この場合、排尿をしたくても慢性的にできない状態(尿閉)になっています。膀胱に老廃物が溜まったままになりますので、腎機能は低下し、水腎症などの罹患リスクも高まるほか、溢流性尿失禁(ダラダラと尿が出ている状態)も見受けられるようになります。
検査について
尿検査や血液検査で別の疾患ではないことを確認することがあります。
また腹部超音波検査によって、前立腺の大きさを調べたり、排尿後にどれだけ膀胱に尿が残っているかを確認したりすることもあります。
このほか尿流測定で排尿時の勢いや排尿時の時間を調べる検査などをしていきます。
治療について
薬物療法:前立腺肥大症の治療で最も一般的な方法です。
α1遮断薬(排尿をスムーズに)
前立腺や膀胱の筋肉をゆるめて、尿の通りをよくします。
例:タムスロシン、シロドシンなど
5α還元酵素阻害薬(前立腺の縮小)
前立腺の体積を小さくして、症状を改善させます。
例:デュタステリド、フィナステリドなど
その他の薬
β3作動薬(ベタニス、べオーバ)抗コリン薬などを症状に応じて、治療します。
手術療法
薬で効果が不十分な場合や、合併症がある場合に検討されます。
当院では、Rezūmによる前立腺肥大症の水蒸気治療に対応しています。
Rezūm治療の長所
- 身体への負担が少ない:腰椎麻酔や局所麻酔で可能。
- 性機能を温存しやすい:他の手術法よりも射精障害などの副作用が少ない。
- 短時間で終了:1回の治療が数分程度と短い。
- 回復が比較的早い:日帰り手術で行います。